届かない名を呼ぶ

届かない名を呼ぶ
伝わらないはずの言葉を紡ぐ
空に向けて呼べば、きっと届く
あの人は月にいるから
銀色の髪が、濃紺の衣が
瞳に残る得意げな笑みが
白い月に重なる

小さく名を呼ぶ
空に解けていくように
小さく、小さく
解けて、いつかはあの月に
必ず白いあの月に
この言葉が
彼の名が
届くと信じて、月を見る

蒼い空に解けていく月は
白く輝く朝の月は
蒼空を纏った、彼そのものだ

柔らかな朝日のなかで
穏やかに輝く
しろく、しろく

朝露は彼の残り香
蒼く澄み渡る、夜明けの馨
あおくてしろい、彼の色
透明に輝く、彼の色
月に紡ぐ、その名前



2004/3/7


言霊へ